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フリック・コレクション / Frick Collection (その1) [美術館]

フリック・コレクションは、ニューヨークのアッパー・イースト・サイド、セントラルパークを望む5番街にあります。




このコレクションは、カーネギーと共同でピッツバーグに製鉄業を興した大富豪ヘンリー・フリック 氏(Henry Frick; 1849 – 1919)の個人コレクションを基としています。

彼の収集作品は130点余りで、彼の邸宅の1階をそのまま美術館にして展示してあります。
蒐集品には絵画、彫刻、調度品等に及びますが、その特徴は、印象派以前の作品が大半で、ヨーロッパ志向が非常に強く、レイノルズ、ゲインズバラ、ターナー、コンスタブル、ヴァン・ダイク、フラゴナール、レンブラント等のコレクションが充実していることです。そして3点のフェルメールでも有名なコレクションです。

印象派の作品ではルノワールの「母と子供たち」が唯一で、画風を異とするゲインズバラの婦人画像に挟まれていて、違和感を覚えました。

以前に紹介したバーンズ・コレクションの蒐集品の一世代前の時代の絵画が中心といった印象です。

ここの作品群はフリック氏の遺言によって門外不出なので、折角美術館へ行っても作品が貸し出されていて観られないということはありません。
入場料は大人15ドルで、うれしいことに、音声ガイドの機材貸し出しも含まれています。他では滅多に無い日本語での解説があり、来歴や、画家や作品などのエピソード、フリック氏が入手した経緯などを聞くことができ、とても充実した時間を過ごすことができました。ただし、音声ガイドを全部聴いて観て回ると3時間以上の長丁場になりますが・・・・・・

蒐集品は、フリック氏が展示した状態を再現して展示してあります。照明はやや暗いのですが、作品が見にくい事はありません。また、絵画はどれもガラス付き額縁や、柵がないため、作品にかなり近寄って見ることができます。(そのため10歳以下の児童は入館できません。)

エントランスを抜けるとそこは19世紀末の大富豪の邸宅にタイムスリップしたような感覚に囚われます。
古代神殿のようなレリーフの彫られた高い天井の通路、階段ホール、リビング、メインダイニング、大広間、書斎、回廊、ギャラリーなど、邸内すべて、床から天井に至るまで贅を尽くした内装が施され、重厚な調度品が置かれています。(絵画の前に無造作に置かれたチェストがマリーアントワネットが愛用していたものだったと聞いたときにはびっくりしました。)さらに奥には、ミュージックホールと噴水付きの屋内ガーデンまでもあります。

当時、夏場には1週間に2度もパーティを催していたという逸話を聞いて、ふと、正装した男女が集い、地下の厨房から運ばれてきた名シェフの手による料理に舌鼓を打ち、グラスを手に絵画を鑑賞したり、談笑する光景が目に浮かぶようでした。

バーンズ・コレクションでは、壁を埋め尽くすかのように所狭しと絵画が掲げられており、観る者を圧倒するかのような展示方法でした。
ここフリック・コレクションでは、内装、調度品、壁の色、採光との調和を程よく計算されたのような配置で掛けられ、作品の持つ重厚さが引き出されていると同時に、部屋の全景が芸術作品となっていました。

二つのプライベートコレクションを比べると、コレクターの趣味の違いがわかり、とても面白く感じました。


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